エリスマン邸殺人事件簿 全12話

第9話 「 告白 」続きの続きの続き



「夕凪さんも琉津田さんも 兎に角 座って話しましょう」戸志川 有起哉は落ち着いた声で、白いカバーのかかった大きなソファーの方に向かいながら言った。

簡素なドアからは想像できない程そこは立派な部屋だった。


高い天井、立派な応接セット。マントルピースまである。



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ソファーテーブルには、水の入ったガラスピッチャーとタンブラー、そしてティーセット一式とドーム型のガラスケースが置いてある。中には美味しそうなカステラがきれいに並べられていた。


琉津田さほりは、汕頭(スワトウ)刺繍のハンカチをポケットから出して涙を拭いながらソファーに座った。
元安比奈 夕凪は、白いタオルをぎゅっと雑巾絞りしながらソファーに座った。

戸志川 有起哉は二人を前に、ゆっくり一人掛けのソファーに座った。


「琉津田さん、大丈夫ですか?」戸志川が聞いた。

「ええ 大丈夫です。夕凪さんを見たら何だか安心してしまって・・・」そう言いながら、もう一度ハンカチで涙を拭った。

「安心したのは私の方よ。お二人を見てどれだけホッとしたか・・・」夕凪は白いタオルを胸に押し当てながら言った。


「琉津田さんが言う通り、僕も夕凪さんの顔を見て本当に安心したんですよ。助かったって・・・」


「えっ助かった?私の方こそ助かったと思ったんですよ。おかしな世界に迷い込んじゃった気がして、もう どうしようと思っていたんです・・・・この世の者じゃない人たちにも遭っちゃったし・・」


「この世のものじゃない人・・・」そう呟いて、琉津田さほりは下を向いた。



「夕凪さんも見たんですか?あの死体」戸志川が少し身を乗り出して言った。


「死体?えっええ 死体・・・・見ました。・・・・・・・生きていたけれど・・」最後の方は小さく呟くように言った。


「大きな男の死体ですよ」


「ええ 死体につまずいてその上に倒れ、大きな白目を剥いた男の目と私の目が合って、いやいやいやいやぁー 思い出したくもない、おぞましい記憶です。・・・・・確かに大きな男見ました。戸志川さんも見たのですか?」


「ええ 僕は演奏会場の椅子置き場の天井からぶら下がる男の死体を。琉津田さんも階段で・・・」そう言って、泣いている琉津田さほりの方を見た。




「お二人とも見たのですね。でも生きていますよ・・・その男」夕凪はさらりと言った。


「えっ?」

「えっ?」


「夕凪さん どどどういうことですか?」いつも落ち着いている戸志川に似合わない、裏返った声で聞いた。




「はぁ」夕凪は小さくため息をついて、今まで起きたことを最初から話し始めた。










続く
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by komaoyo | 2015-07-25 00:39 | 読み物 | Comments(0)

エリスマン邸殺人事件簿 全12話

第9話 「 告白 」続きの続きの続き



「クモクモクモクモクモクモ蜘蛛クモクモクモクモ蜘蛛がぁああ」早口で叫びながら、人差し指で頭上を指した。


男は、大きい蜘蛛を手で払いのけた。

ぶら下がっていた蜘蛛の糸が切れ、蜘蛛は廊下の端に落ち、そそくさと逃げて行った。


「もう大丈夫ですよ。蜘蛛はいませんよ」

「本当に?本当に?」そう言って男を見上げた。


「あっ夕凪(ゆうな)さん?」

「あっ戸志川さん」


「夕凪さん・・・ですよね。 どうして此処に?」

「戸志川さんどうして此処に?」

二人は顔を見合わせ同時にお互いを指で指し言った。





夕凪は、尻もちをついたお尻をさすりながら起き上がった。

「大丈夫ですか?」

「ええ 少し痛いですけれど・・・」



「あっ包帯。顔が腫れている・・・一体どうしたんです?」

「話せば長いんですけどね。ちょっと・・・それより良かったぁ。私、もう変な事ばかり起こって・・・元の世界に戻れないんじゃないかと不安になっていたんです。本当に良かった お会いできて!!」



「夕凪さん?」

ドアの後ろから女が顔を出した。


「あっ琉津田さん 琉津田さんもいらしたのね。あー良かった」

「夕凪さーん」と言いながら、いきなり琉津田さほりは夕凪に抱きついた。


「琉津田さん?どどどうしたのです?」夕凪は戸惑いながら言った。

「私達ね私達ね・・・」琉津田さほりは泣きながら言った。


「話の続きは、とりあえず部屋に入ってしましょう」戸志川は2人の肩を叩きながら言った。




続く
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by komaoyo | 2015-07-23 23:59 | 読み物 | Comments(0)

エリスマン邸殺人事件簿 全12話

第9話 「 告白 」続きの続きの続き



この世のものでない者に会ったり、白目を剥いて死んだふりをする男に会ったり、元来た場所に戻ろうとしてドアを開けたら、まるで違う場所に出たり。


ありえないことだらけの事実。


落ち着け私。とりあえず落ち着くのよ。


「伊勢谷仁~~~つ」



もう一度「伊勢谷仁ーーーーーーーーーっ」大きな声で叫んだ。

返事はどこからも聴こえない。

心細い気持ちになり「戻れないかも」こんな不吉な言葉まで浮かんできた。


肝心な時に限って出てこない伊勢谷仁。










こんな時、不思議の国のアリスだったら、時計を持った白兎やチシャ猫が道案内してくれるのに。
私の前には何も現れない。




猫一匹 ネズミ一匹見当たらない。





探すのよ!あの部屋を。こうなったら私一人で。

バックだって大事な二胡だって置いたままなんだから。

片っ端からドアというドアを開けて探すしかないわ。そう決心して私はとりあえず左に見える階段の方に行ってみた。

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上に行こうか、下に行こうか。


そう迷った時、階段下から話し声がした。


はっきりとは聞き取れないが、確かに人の声。


私は、恐る恐る階段を降り、話し声のしたドアの前に立った。


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ドアにそっと近づき、聞き耳を立てた。



「もしかしたら 私たち・・・」

「大丈夫ですよ・・・きっと・・・」

女と男の声がした。


女の声は泣いているようにも聞こえた。


私は、もっと聞こうと耳をドアに押し付けた。その時、目の前に大きな蜘蛛が降りてきた。

「嫌あああああああ」





「誰だ?」



尻もちをついている私に、ドアを開けた男が言った。




続く
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by komaoyo | 2015-07-23 23:36 | 読み物 | Comments(0)

エリスマン邸殺人事件簿 全12話

第9話 「 告白 」続きの続き




心臓がいくつあつても足りない。

私に私が驚くなんて・・・なんてまぬけな。



「大丈夫ですか?」伊勢谷仁は私の顔を心配そうに覗き込んだ。

「だ だ 大丈夫 大丈夫だから 廊下で待っていてください」両手で顔を隠して素早く横を向いた。

「本当に?」

「ええ」

「では、 先ほどいらしたお部屋でお待ちしております」そう言ってスッと消えた。


そうよそうやってスッと消えてこそ伊勢谷仁よ!

それより何?この顔

あり得ない


素早く蛇口を捻り水を出し、ジャブジャブと顔を洗った。

酷く水が沁みる。

もう一度鏡を見る。


あーどうしよう こんな顔じゃ演奏できないわ・・・・。


ポケットからハンカチを取り出し水につけた。ぎゅっと絞ってそっと顔をこする。

情けないやら情けないやら情けないやら。「 とほほほほっ 」この言葉がこれ程当てはまる顔なんてこの世にありゃしない・・・ きっと。


兎に角、伊勢谷仁にちゃんと説明してもらおう、何が何やら分からないことだらけなのだから。


ひりひりとする顔を又ジャブジャブと洗い、置いてあったタオルで抑えながら、「ふーう」と大きく深呼吸した。


何だかあちこち体が痛い。

私はドアノブを捻りドアを開けた。


さっきの部屋はどっちだっけ? 方向音痴はどんな時も私を困らせる。

右か左。あれっ?なんだかこの廊下さっきと違うような。

嫌 全然違う。

確か私は左から長い廊下を通って、伊勢谷仁を追いかけて来た筈。なのに左を見たらすぐに階段がある。


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階段なんてなかった筈よ。絶対絶対おかしいわ。


持っていたタオルを握りしめ今度は右を見た。


こちらにも階段が・・・。


変 変 変だ。

「伊勢谷仁 出てきてよぉ ちょっとあなた何したのよぉ どうなっちゃっているの一体」



左右の階段の方からは返事がない。


さっき叫んだ時はすぐ現れたのに、なんでこんな肝心な時すぐ現れない。


「伊勢谷仁 ちょっと ぉおおお 」




続く



やっと書いたのに、この程度。なめとんのかぁ・・・とお思いのお方。
おほほほほっ 待てば海路の日和あり 果報は寝て待て それからそれから ・・・・(;^_^A

棚から牡丹餅 を待って続きを書きます。
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by komaoyo | 2015-07-23 19:30 | 読み物 | Comments(0)